*** 這いずる物体 ***

年を経るにつれて恐ろしいもの、苦手なものというのは減ってきたように思う。もちろん、今まで平気だったものが駄目になる例もある。

以前から嫌いだったが、近頃特に苦手になったものが一つある。

ナメクジだ。

奴らが出るのだ、我が家には。大量に。いや、大量は言い過ぎた。しかし雨あがりには要注意である。台所の流し場、そして風呂場の壁面や排水口付近。そういった場所を奴らは悠々と這い回っている。

実におぞましい光景だ。

言っておくが私は外見だけに怯えているわけではない。君は奴らの駆除方法を知っているか?

塩をかける?

いいだろう、かけてみたまえ。気分を害する光景を目の当たりにすることだろう。そして奴らは塩によって溶解しているわけではないのだ。体内の水分を奪われ縮んでいるに過ぎない。

水分を奪われ濃くなった粘液は体の中心の水分を容易には外へ逃がさない。つまり完全に絶命させるには長い時間と多量の塩が必要なのだ。

そして、恐ろしい事に完全に息の根を止めない限り水分を得れば再び甦る。

無知だった頃の私は、流し場で発見した奴に多量の塩化ナトリウムをお見舞いし完全に動かなくなったところで排水溝へと流していた。

しかしそれでは意味が無かったのだ!

追いやった筈の深淵から奴は再び登ってくる。元通りの復活した姿で。

奴らを駆除するには天敵か毒を用意するしかない。もしくは奴らの忌避する銅を使って侵入を防ぐかだ。

しかし・・・一つだけ禁断の邪法が存在する。

奴らは酵母菌を愛してやまないらしい。理由はわからない。わからないが、そこを衝く事は可能だ。

つまり、飲みかけのビール缶を放置しておけばいい。奴らは浅ましくも先を争って黄金色の海に飛び込み、暫くの後溺死する。

はっきり言ってあんな下等な生物に麦酒を与えるのは惜しい。これが邪法である理由だ。

そして禁断の手である理由は・・・決して役目の終わった缶の中に興味を持ってはいけない。つまりはそういうことだ。

ついでに言うならその"缶"をどう処分するというのか・・・

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